「あの人がいないと回らない」を放置するリスク|中小企業の属人化を解消する方法

「あの人がいないと回らない」を放置するリスク|中小企業の属人化を解消する方法
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「あの人が休んだら、誰も代わりにできません」

請求書の処理はAさんしかわからない。取引先Bとの窓口はCさんだけ。システムの設定変更はDさんにしかできない。——中小企業では、こうした「特定の人にしかできない業務」が当たり前のように存在しています。

普段はそれでも回っています。しかし、その人が病気で1週間休んだら? 突然退職したら? 事故に遭ったら? 属人化とは、「あの人がいないと業務が止まる」という状態であり、これは経営リスクそのものです。

中小企業では人員に余裕がなく、自然と一人ひとりの守備範囲が広くなります。結果として属人化が進みやすい構造にあります。しかし、属人化を「仕方ない」と放置し続けると、ある日突然、取り返しのつかない事態に直面します。

このコラムでは、属人化がなぜ危険なのか、そしてどうすれば解消できるのかを、中小企業の現実に即して解説します。

目次

属人化が引き起こす4つのリスク

リスク1|突然の退職で業務が止まる

最大のリスクは、キーパーソンの突然の退職です。引き継ぎ期間が十分にあれば対処できますが、実際には「来月末で辞めます」と言われてから慌てるケースがほとんどです。1ヶ月では到底引き継げない業務を抱えている人が辞めると、その業務は宙に浮き、顧客対応の遅延やミスにつながります。

属人化した業務の引き継ぎは、属人化していない業務の引き継ぎに比べて、時間も労力も何倍もかかります。マニュアルがなく、手順が言語化されておらず、「勘と経験」で回していた業務を他の人に移すのは、本質的に困難なのです。

リスク2|その人の「機嫌」に組織が振り回される

属人化した業務を持つ社員は、意図するかどうかに関わらず、組織の中で特別な影響力を持ちます。「あの人に辞められたら困る」という空気があると、その人の要求に周囲が合わせざるを得なくなります。

本人に悪意がなくても、「代わりがいない」という状態は、組織のパワーバランスを歪めます。結果として、他の社員が不満を感じ、「あの人だけ特別扱いされている」という認識が広がります。

リスク3|品質が安定しない

属人化した業務は、その人の体調やモチベーションによって品質が変動します。調子の良いときは高品質、忙しいときや疲れているときは品質が落ちる。品質が個人のコンディションに左右される状態は、組織としては脆弱です。

業務が標準化されていれば、誰がやっても一定の品質を保てます。属人化を解消することは、品質の安定化にも直結するのです。

リスク4|本人の成長とキャリアが停滞する

見落とされがちですが、属人化は本人にとってもデメリットです。「自分しかできない業務」に縛られて、新しい仕事に挑戦する機会がない。別の役割に移りたくても、「代わりがいないから異動できない」と言われる。

結果として、本人のキャリアが停滞し、モチベーションが低下して退職——という最悪のシナリオに至ります。属人化は、本人を「囲い込んでいる」のではなく「追い詰めている」可能性があるのです。

属人化を解消する3つのステップ

ステップ1|「属人化している業務」を洗い出す

解消の第一歩は、どの業務が、誰に属人化しているかを可視化することです。

やり方はシンプルです。全社員に「自分しかできない業務」「自分が休んだら止まる業務」をリストアップしてもらいます。同時に、管理職にも「部下の中で、代わりのきかない業務を持っている人は誰か」を確認します。

この洗い出しで、属人化のリスクが高い業務が「見える」状態になります。多くの場合、経営者が思っていた以上に属人化が進んでいることに気づきます。全部を一度に解消する必要はありません。まずはリスクの高いものから優先順位をつけます。

ステップ2|「暗黙知」を「形式知」に変換する

属人化している業務の多くは、手順やノウハウが本人の頭の中にしかない「暗黙知」の状態です。これを他の人にも理解できる「形式知」——つまり言語化・文書化された知識——に変換する必要があります。

ただし、「マニュアルを作れ」と指示するだけでは進みません。属人化した業務を担当している本人は、日常業務で手一杯なことが多く、マニュアル作成の時間が取れないからです。

効果的な方法は、本人が業務をやっているところを別の人が横で見ながら手順を記録する「ペア作業方式」です。本人は普段どおり業務をこなし、横にいる人が「今何をしましたか?」「なぜそうするんですか?」と質問しながらメモを取る。この方法なら、本人の負担は最小限で、暗黙知が自然と言語化されます。

マニュアルは完璧でなくて構いません。A4で1〜2枚の簡易手順書と、判断に迷うポイントのメモがあるだけで、引き継ぎのハードルは劇的に下がります。

ステップ3|「一人でやる」から「複数人でできる」に変える

形式知化ができたら、次は実際に別の人がその業務をやってみる段階です。

最も効果的なのは「クロストレーニング」——つまり、定期的に業務を交換して経験を積む方法です。月に1〜2日、別の人がその業務を担当してみる。最初は本人が横でサポートし、徐々に一人でできるようにしていきます。

中小企業では、全員が忙しいため「業務交換の余裕がない」と感じるかもしれません。しかし、「余裕がないからやらない」のではなく、「余裕がないからこそやる」べきです。属人化を放置したまま突然のリスクに直面するほうが、はるかにコストが大きいからです。


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属人化は、単に業務の問題ではなく、組織全体の構造的な課題を反映していることが多いです。「業務が偏っている」「コミュニケーションが不足している」「評価制度が個人プレーを助長している」——こうした組織課題が属人化の温床になっています。

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属人化解消を「脅威」ではなく「成長機会」にする

本人の抵抗感への対処

属人化を解消しようとすると、当事者から抵抗が出ることがあります。「自分の仕事を取り上げられる」「自分の価値がなくなる」と感じるからです。この心理は自然なものであり、無視してはいけません。

対処法は、属人化の解消が「あなたの仕事を奪うこと」ではなく「あなたを楽にすること」であり「あなたの次のステップを開くこと」と明確に伝えることです。

「今の業務を他の人もできるようになれば、あなたは新しい仕事にチャレンジできる。休暇も取りやすくなる。あなたの価値は業務の独占ではなく、その知識と経験そのものにある」。この文脈を経営者が自ら伝えることで、本人の不安は大幅に軽減されます。

外部面談で「本音」を引き出す

属人化している社員が抱える本音は、上司や経営者には言いにくいものです。「実は限界を感じている」「誰かに任せたいが、言い出せない」「辞めたいと思っているが、引き継ぐ人がいない」——こうした声は、外部のキャリアコンサルタントとの面談で初めて表に出ることがあります。

守秘義務の仕組みについてはキャリア面談の守秘義務と本音を引き出す仕組みをご覧ください。また、新人教育における属人化の問題はOJTの属人化を解消する仕組みの作り方で取り上げています。

まとめ|属人化は「能力の証」ではなく「組織の脆弱性」

「あの人にしかできない」という状態は、一見するとその人の能力の高さの証に見えます。しかし経営の視点から見れば、それは組織が特定個人に依存している脆弱な状態です。

属人化を解消するための3ステップは明快です。まず、属人化している業務を洗い出す。次に、暗黙知を形式知に変換する。最後に、複数人がその業務をできる体制を作る。

そしてこの取り組みを、当事者にとっても「自分を楽にし、次のステップに進むための機会」として設計すること。属人化の解消は、組織のリスク管理であると同時に、社員一人ひとりのキャリア支援でもあるのです。

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