社労士と何が違う?中小企業のキャリアコンサルタント活用法

社労士と何が違う?中小企業のキャリアコンサルタント活用法
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労務のことは社労士に聞ける。では「社員の本音」は誰に聞く?

多くの中小企業には、顧問税理士がいて、顧問社労士がいます。お金のことは税理士に、手続きと労務のことは社労士に——この体制で会社は回ります。ところが、「若手が何を考えているのか分からない」「辞めそうな社員の本音を知りたい」「社員のやる気を引き出したい」という「人の内面」に関わる悩みになると、誰に相談すればいいのか分からない、という経営者が少なくありません。

この領域を専門とするのが、国家資格のキャリアコンサルタントです。このコラムでは、社労士とキャリアコンサルタントの役割の違いと使い分け、中小企業での具体的な活用場面、費用感と選び方までを解説します。先に申し上げると、これは「どちらが上か」という話ではなく、両方を適材適所で使う会社が強い、という話です。

中小企業を支える専門家マップ——それぞれの持ち場

まず全体像です。中小企業を支える主な士業・専門家には、それぞれ明確な持ち場があります。税理士は税務と会計。社会保険労務士(社労士)は労働・社会保険の手続き、就業規則などの労務管理、助成金申請。中小企業診断士は経営戦略や事業計画。そしてキャリアコンサルタントは、働く人のキャリア形成支援——つまり、社員一人ひとりの「これからどう働くか」に伴走する専門家です。

キャリアコンサルタントは2016年に国家資格化された比較的新しい資格で、資格を持たない人がこの名称を使うことはできません(名称独占資格)。そして重要なのが、相談内容の守秘義務が職業能力開発促進法という法律で定められていることです。この「法律に裏付けられた守秘義務」が、後述する活用場面で大きな意味を持ちます。

社労士の領域/キャリアコンサルタントの領域

両者の違いを一言でいえば、社労士は「会社と労働者の間のルールと手続き」の専門家、キャリアコンサルタントは「働く個人の意欲とキャリア」の専門家です。

社労士の中心業務は、社会保険・労働保険の手続き、給与計算や就業規則の整備、労務トラブルの予防、そして助成金の申請代行(これは社労士の独占業務です)。会社を法令面から守り、制度を整える役割であり、成長する会社に不可欠な存在です。助成金活用との関係は助成金申請に社労士は必要かで詳しく解説しています。

一方、キャリアコンサルタントが担うのは、社員とのキャリア面談(仕事の悩み、将来への迷い、能力開発の方向づけ)、キャリア研修、組織開発の支援です。就業規則は社員の「行動」を整えますが、キャリア面談は社員の「意欲」に働きかけます。制度と手続きは社労士、人の気持ちとキャリアはキャリアコンサルタント——この使い分けが基本形です。実際、キャリアクリエにも国家資格キャリアコンサルタントが5名在籍し、労務・助成金の実務は提携する社労士と連携して対応しています。両者は競合ではなく、組み合わせて機能するものなのです。

活用場面1|定期キャリア面談——守秘義務があるから本音が出る

中小企業での活用場面として、まず挙げられるのが社員との定期的なキャリア面談です。「社内で上司が1on1をやっているから十分では?」と思われるかもしれません。しかし、上司は評価者です。評価者に対して「今の仕事が向いていない気がする」「転職を考えたことがある」とは、なかなか言えません。

外部のキャリアコンサルタントは、評価に関与せず、しかも法律上の守秘義務があるため、本人の同意なく面談内容が会社に伝わることはありません。この構造が、社内面談では決して出てこない本音を引き出します。会社側には個人の発言そのものではなく、組織全体の傾向や課題が(本人の同意の範囲で)フィードバックされるため、経営者は「社員が本当は何に悩んでいるか」を、個人を詮索することなく把握できます。面談で実際に何が話されるのかはキャリアコンサルティング面談の中身を、守秘義務の仕組みはキャリア面談の守秘義務はどこまで守られるかをご覧ください。

活用場面2|研修・組織開発——「辞めさせない」から「育てる」へ

もう一つの活用場面が、研修と組織開発です。キャリア研修というと「転職を促すのでは」と心配される経営者もいますが、実際は逆です。自分のキャリアの棚卸しをし、「この会社で自分はどう成長できるか」を言語化した社員は、目の前の仕事への意味づけが変わり、定着しやすくなることが、セルフ・キャリアドックを導入した企業などで報告されています。

また、若手向け・中堅向け・管理職向けと階層別にキャリア研修を設計したり、面談で見えた組織課題(例:中堅層のキャリアの停滞感、部署間の不公平感)をもとに人事制度や育成体系の改善につなげたりと、面談→課題の可視化→組織施策という一連の流れを支援できるのが、キャリアコンサルタント活用の本領です。


【無料】専門家に相談する前に、自社の課題を可視化する

「面談や研修を入れるべきか、まだ判断がつかない」という段階なら、まず自社の組織の状態を客観的に知ることから始めるのがおすすめです。課題がどこにあるかで、頼むべき専門家も変わります。

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費用感と選び方——「資格の有無」と「企業支援の経験」を見る

キャリアコンサルタントへの依頼形態は、大きく分けて、面談1回ごとのスポット契約、月あたりの訪問回数を決めた顧問型契約、研修単位での契約があります。費用は面談の人数・頻度・研修の規模によって幅があるため一概には言えませんが、顧問社労士や顧問税理士と同じ「月額数万円台から」の感覚で設計できるケースが多く、後述する助成金と組み合わせて負担を抑えられる場合もあります。複数の候補から見積りを取り、内容と比較することをおすすめします。

選ぶ際のポイントは3つです。①国家資格の有無——「キャリアコンサルタント」は国家資格者だけが名乗れる名称です。まずここを確認してください。②企業領域の支援経験——個人向けの転職支援が中心の人と、企業内のキャリア支援・組織開発が得意な人がいます。中小企業での支援実績を聞きましょう。③他の専門家との連携体制——キャリア面談から見えた課題が、労務制度や助成金活用につながることはよくあります。社労士等と連携できる体制があると、施策が途切れません。

セルフ・キャリアドックという仕組み——単発で終わらせない

キャリアコンサルタントの活用を、単発の面談や研修で終わらせず、仕組みとして定着させる枠組みが、厚生労働省の推進するセルフ・キャリアドックです。これは、キャリアコンサルタントによる定期的なキャリア面談と、キャリア研修を組み合わせて、社員のキャリア形成を継続的に支援する仕組みのこと。健康診断が体の定期チェックであるように、セルフ・キャリアドックはキャリアと意欲の定期チェックです。

年1回の面談を全社員に回すだけでも、「不満が退職届になる前に拾える」「若手の育成課題が毎年定点観測できる」といった効果が期待できます。制度の全体像はセルフ・キャリアドックとは何かで詳しく解説しています。

まとめ|制度は社労士と、人の心はキャリコンと

整理します。①社労士は労務手続き・就業規則・助成金申請(独占業務)の専門家、キャリアコンサルタントは社員のキャリア支援・面談・組織開発の専門家で、役割は競合しない。②キャリアコンサルタントは国家資格であり、法律上の守秘義務があるからこそ社員の本音を引き出せる。③活用の柱は定期キャリア面談と研修・組織開発。選ぶ際は資格・企業支援経験・連携体制を確認する。④継続的な仕組みにするならセルフ・キャリアドックという枠組みがある

会社の成長は、制度の整備と社員の意欲の両輪で進みます。労務の体制はすでにあるという会社こそ、もう一つの車輪として、キャリアコンサルタントの活用を検討してみてください。

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