広告・HP制作に補助金は使えるか|新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の広告宣伝費

広告・HP制作に補助金は使えるか
  • URLをコピーしました!
目次

「広告費に補助金は使えますか」に、正確に答える

チラシを作りたい。ホームページを作り直したい。展示会に出たい。——こうした販路開拓の投資に、国の補助金は使えます。ただし「使える」と「思ったとおりに使える」は別の話です。

実務で起きているのは、だいたい次の2パターンです。ひとつは「広告費だけで申請しようとして、そもそも申請が成立しなかった」。もうひとつは「制作は終わったのに、発注のタイミングや見積の取り方が要件を外していて、補助対象として認められなかった」。どちらも、公募要領の注記まで読んでいれば防げたものです。

この記事では、広告・販促に使える主力の制度である新事業進出・ものづくり商業サービス補助金について、公募要領の本文と注記から「広告宣伝・販売促進費のルール」を整理します。2026年8月20日時点の第1回公募要領(1.2版)にあたって確認した内容です。

まず制度の全体像|旧ものづくり補助金の後継

正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金。「ものづくり補助金」と呼ばれることが多い制度の現在の名前です。旧・中小企業新事業進出補助金は公募を終了しており、新規の受付はこちらに一本化されています。実施は中小企業基盤整備機構です。

枠は3つあります。

  • 革新的新製品・サービス枠:革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援。補助上限は従業員数に応じて1〜5人が750万円、6〜20人が1,000万円、21〜50人が1,500万円、51人以上が2,500万円。賃上げ特例の適用でそれぞれ850万円・1,250万円・2,500万円・3,500万円に上がります
  • 新事業進出枠:既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援。補助上限は1〜20人が2,500万円、21〜50人が4,000万円、51〜100人が5,500万円、101人以上が7,000万円。賃上げ特例の適用で3,000万円・5,000万円・7,000万円・9,000万円
  • グローバル枠:海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化など。補助上限額は新事業進出枠と同じ従業員数区分・同じ金額ですが、補助率は異なります(後述)

補助率は枠ごとに違います。ここは誤解が多いので、公募要領の表のとおりに整理します。

  • 革新的新製品・サービス枠:中小企業者は1/2。小規模企業者・小規模事業者および再生事業者は2/3
  • 新事業進出枠:中小企業者1/2。この枠では小規模企業者・小規模事業者、再生事業者も中小企業者に含まれ、原則1/2です(革新的新製品・サービス枠のような2/3の別建てはありません)
  • グローバル枠:2/3

公募要領の表には括弧書きが2か所あり、それぞれ係る先が違います。補助上限額欄の括弧は「賃上げ特例」の適用者に、補助率欄の括弧(2/3)は「地域別最低賃金引上げ特例」の適用者に適用されます。後者は、上の小規模事業者向けの2/3とはまた別の話です。「小規模だから2/3」と「特例だから2/3」は混ざりやすいので、自社がどれに当たるかは公募要領の表と脚注で確認してください。

広告宣伝・販売促進費は、3枠すべてで対象になる

まず結論から。広告宣伝・販売促進費は、革新的新製品・サービス枠を含む3枠すべてで補助対象です。「ものづくり補助金は設備投資の制度だから広告には使えない」という理解は、現行制度では正しくありません。

公募要領の経費区分表には、この経費の対象範囲がこう書かれています。

補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、補助事業のPR等に係るウェブサイトの構築、展示会出展、ブランディング・プロモーションに係る経費

パンフレット、動画、写真、媒体掲載、ウェブサイト構築、展示会、ブランディング。制作会社が扱う領域はひととおり入っています。

上限は定額ではなく「売上見込みの5%」

この経費区分の上限額は、他の補助金のような「◯◯万円まで」という定額ではありません。公募要領の記載はこうです。

事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜き)の5%

計算式も明示されています。上限額 = 事業計画期間内の補助事業における売上見込み額合計 ÷ 事業計画年数 × 5%

つまり、事業計画の売上規模が大きいほど広告に回せる枠も大きくなります。3年計画で新製品の売上見込みが合計3億円なら、年平均1億円の5%で年500万円が上限。逆に、売上見込みを小さく置いた計画では広告費もほとんど積めません。広告費の上限は、事業計画の書き方で決まるということです。

見落とすと事故になる6つの注記

広告宣伝・販売促進費には、公募要領上6本の注記がぶら下がっています。実務でつまずくのはほぼここです。

1. 広告費だけでは申請できない

公募要領には、補助対象経費に「補助事業の事業化に必要不可欠な事業資産」が含まれている必要があるとあり、革新的新製品・サービス枠では機械装置・システム構築費が、新事業進出枠とグローバル枠では機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが、必ず補助対象経費に含まれていなければならないと定められています。

広告宣伝・販売促進費は、あくまで設備投資に付随する経費です。「ホームページのリニューアルだけ」「動画制作だけ」という申請は成立しません。

2. 100万円以上のウェブサイト構築費には、原価の開示が必要

これは制作会社と発注者の双方に関わる話です。100万円(税抜)以上のウェブサイト構築費を計上する場合、実績報告時に開発費用算出資料の提出が必要になります。公募要領が挙げているのは「作業単価、作業工数及び作業時間、固定費用、作業担当者、作業担当者勤務記録等」です。

一式いくら、という見積では通りません。制作会社側に、工数と単価に分解した資料を出してもらう前提で発注する必要があります。発注前に「補助金を使うので工数明細を出せますか」と確認しておくのが安全です。

3. 金額にかかわらず相見積もりが必要

注記には「金額に関わらず、複数者からの見積もり及び価格の妥当性が確認できる証憑の提出が必要です」とあります。少額だから1社でいい、という運用はできません。

これは「付き合いのある1社に任せる」という中小企業でよくある進め方と正面からぶつかります。本命の制作会社が決まっている場合でも、比較用の見積を取っておく必要があります。

4. 交付決定の後に発注する。公開・掲載も期間内に

「補助事業実施期間内に広告が使用・掲載されること、ウェブサイトが公開されること、展示会が開催されること等が必要」で、「交付決定後の発注・契約が前提」と明記されています。

採択されただけでは足りません。交付決定を受ける前に発注・契約したものは対象外です。そして制作が終わっただけでも足りず、期間内に実際に公開・掲載されている必要があります。制作スケジュールを組むときは、この2点を前後の縛りとして置いてください。

5. 成果物の証拠を全部残す

実績報告時に「成果物の写真等を全て提出」が必要です。ネット広告などの電子媒体についても、掲載した時期・内容・その事実が分かる資料を求められます。

紙媒体なら現物と写真、ウェブ広告なら管理画面のスクリーンショットや掲載レポート。掲載が終わってから集めようとすると、消えていて出せないということが起こります。走りながら保存しておくべき類のものです。

6. 会社全体のPR広告は対象外

対象外経費として名指しされているのが、「補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に係る経費」です。

会社案内パンフレット、企業ブランディングのためのコーポレートサイト、既存商品の広告——これらは通りません。あくまでこの補助事業で新しく作る製品・サービスの広告であることが条件です。「ついでにコーポレートサイトも新しくする」という考え方は、経費の切り分けを厳密にしないと危険です。

あわせて、補助対象外経費の一覧には広告制作に関係するものがいくつか入っています。「映像制作における被写体や、商品(紹介物等を含む)の購入に係る関連経費」「販売・レンタルする商品・試作品・サンプル品・予備品の購入費」、そして「汎用性があり、目的外使用になり得るもの(例:事務用のパソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、タブレット端末、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電等)」。撮影用に買ったカメラや、動画に映すために買った商品は対象外ということです。

意外な関門|「人事の宿題」が申請要件に入っている

ここは、広告の相談から入った企業がいちばん見落とすところです。この補助金の基本要件には、設備投資や売上の話とは別に、労務・人事に関する要件が含まれています

基本要件として求められるのは次のとおりです。

  • 付加価値額の年平均成長率4.0%以上(営業利益+人件費+減価償却費)
  • 一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上。目標値未達の場合は補助金の返還義務があります
  • 事業場内最低賃金を、毎年、実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準にすること
  • ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、申請締切日時点で有効なものを「両立支援のひろば」に公表していること
  • 子育て等に関する職場環境整備の取り組みを、指定された3類型から1つ選んで実施すること(プラチナくるみん・くるみん・トライくるみんのいずれかの認定を取得している事業者は免除)

とくに注意したいのが一般事業主行動計画の公表です。公募要領には「『両立支援のひろば』に掲載するにあたっては、1〜2週間程度の期間を要します」「公表申請の審査過程で不備が発覚する場合もありますので、2週間以上の余裕をもって公表申請を行ってください」と明記されています。

行動計画を作ったことがない会社にとって、これは決して軽い作業ではありません。締切の直前に気づくと、間に合わないことがある要件です。広告の企画と並行して、あるいはそれより先に着手すべきものだと考えてください。

なお「子育て等に関する職場環境整備」の3類型のうち(ウ)は、産前・産後休業、育児休業、短時間勤務、フレックス、年次有給休暇、女性労働者のキャリア形成支援といった既存制度を従業員に周知・普及・啓発する、というものです。日頃から社員との面談やキャリア支援に取り組んでいる会社であれば、実質的に手の届く範囲にあります。

スケジュールは10月30日18時から逆算する

第1回公募の日程です。2026年7月17日にスケジュールが変更されているので、それ以前の情報を載せた記事には古い日付が残っています。

  • 公募開始:2026年6月29日(月)
  • 応募申請の受付開始:2026年9月30日(水)
  • 応募締切:2026年10月30日(金)18:00(厳守)
  • 採択発表:2027年1月(予定)
  • 補助事業実施期間:革新的新製品・サービス枠は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)、新事業進出枠・グローバル枠は交付決定日から14か月以内(同16か月以内)

申請は電子申請システムでのみ受け付けられます。そのために必要なのがGビズIDプライムアカウントで、公募要領には「発行には1週間程度時間を要します」とあります。書類に不備があればさらに延びます。未取得なら、今日申し込んでおくべきものです。

逆算するとこうなります。一般事業主行動計画の公表に2週間以上、GビズIDの発行に1週間程度、そのうえで事業計画の作成。9月中に事務手続きを終えて、10月を計画の詰めに使う——このくらいの余裕がないと、締切に追われることになります。

いくつか補足を。認定経営革新等支援機関の確認書は任意です(必須ではありません)。金融機関から資金提供を受ける場合は、金融機関による確認書が必要になります。また、応募申請日を起点とした過去3年間に「事業再構築補助金」「新事業進出補助金」「ものづくり補助金」の交付決定を合計2回以上受けた事業者は補助対象外です。

なお事務局には公開されている電話番号がありません。問い合わせは公式サイトのコールバック予約システムからの完全予約制です。締切間際は予約が取りにくくなることが想定されるので、疑問点は早めに潰しておくのが賢明です。

小さく始めるなら持続化補助金。ただし天井は60万円

「そこまで大きな投資ではない」という場合の選択肢が小規模事業者持続化補助金です。ただしこちらは、第20回で広告制作に不利な方向にルールが変わっています。

ウェブサイト関連費は、第19回までの「補助金交付申請額の1/4かつ最大50万円」から、30万円(税込)を上限に変更されました。広報費にはもともと上限の定めがありませんでしたが、第20回で30万円(税込)の上限と「単独申請不可」が新設されています。公募要領には「広報費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください」と明記されています。

なお、ウェブサイト関連費の単独申請不可は第19回から継続しています。広報費もウェブサイト関連費も、それだけでは申請が成立しません。いずれも他の経費と組み合わせる必要があります。

結果として、広告関連で引ける補助金は合計60万円が天井です(広報費30万円+ウェブサイト関連費30万円。いずれも上限額であり、必ずその額が交付されるわけではありません)。第19回までの情報で「HP制作に50万円使える」と考えていると、要件を外します。

第20回の受付は2026年11月5日(木)から12月15日(火)17時まで。商工会議所・商工会が発行する事業支援計画書(様式4)の締切は12月4日(金)で、これを過ぎた発行依頼はいかなる理由があっても受け付けられません。ただし様式4は、締切前であっても補助対象要件を満たさなければ発行されない点にも注意が必要です。日程は変更される場合があるため、申請前に公式サイトで最新の情報を確認してください。

2つの制度の使い分けは、広告制作・販路開拓に使える補助金ガイドで詳しく整理しています。

制作会社の立場から見た、現実的な進め方

ここまでを踏まえると、広告制作に補助金を使う場合の段取りはこうなります。

①先に事業計画を決める。 広告費の上限は売上見込みの5%で決まり、そもそも設備投資と組み合わせないと申請が成立しません。「何を新しく作って、いくら売るか」が先で、広告はその後です。

②人事側の要件を並行して進める。 一般事業主行動計画の公表には2週間以上かかります。ここは制作の話とは独立して動かせるので、早く始めるほど楽になります。

③交付決定を待ってから発注する。 前倒しで契約すると対象外になります。制作会社にもこのスケジュールを共有しておく必要があります。

④相見積もりと工数明細を用意する。 金額を問わず複数社の見積が必要で、100万円以上のウェブサイト構築には工数明細が要ります。

⑤証拠を残しながら進める。 成果物の写真、掲載時期の記録。後から集めるのは困難です。

参考として、旧・中小企業新事業進出補助金の採択実績は、第1回が応募3,006件に対し採択1,118件、第3回が応募1,212件に対し採択423件でした(採択率そのものは公表資料に記載がなく、件数からの計算値です)。誰でも通る制度ではありません。事業計画の中身が問われます。

まとめ|使えるが、順番を間違えると使えない

整理します。

①広告宣伝・販売促進費は3枠すべてで対象。ただし機械装置・システム構築費との組み合わせが必須で、単独計上はできない。
②上限は定額ではなく、事業計画期間1年当たりの売上見込み(税抜)の5%。
③相見積もり必須、交付決定後の発注、期間内の公開、成果物の証拠提出という4つの実務ルールがある。
④会社全体のPR広告・既存事業の広告は対象外。
⑤一般事業主行動計画の公表など人事側の要件があり、これに2週間以上かかる。⑥締切は2026年10月30日(金)18時厳守

広告費に補助金は使えます。ただし「広告をやりたいから補助金を探す」という順番では、たいてい要件を外します。新しい製品・サービスをどう立ち上げ、どう売るかという計画が先にあり、広告はその実行手段として位置づけられる——制度はそういう設計になっています。

当社は広告制作会社として企画・制作物の設計と見積の作成を行い、あわせて人事・労務の支援も行っています。申請手続きそのものは商工会議所・商工会や認定経営革新等支援機関と連携して進める立て付けです(採択を保証するものではありません)。広告制作のご相談も、助成金ガイド(無料PDF)のダウンロードも、お気軽にご利用ください。

※本記事は2026年8月20日時点で、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 第1回公募要領(1.2版・令和8年8月改訂)および公式サイトの本文を直接確認して作成しています。公募要領は改訂されることがあり、募集は予算到達等により変更される場合があります。対象経費・要件の個別判断は公募要領および事務局の公式見解によります。事務局への問い合わせは公式サイトのコールバック予約をご利用ください。

「うちの組織は大丈夫か?」——まず5分で現在地を確認しませんか

30問・登録不要・完全無料の組織診断で、離職リスクなど5つの観点をスコア化できます。

無料で組織診断する(登録不要・5分) サービスと料金を見る(助成金で実質負担を大幅軽減) 無料PDF「助成金かんたんガイド2026」をもらう 専門家に無料相談する →
広告・HP制作に補助金は使えるか

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次