若手が本音を言わないのは何故か|世代論に逃げないマネジメント

若手が本音を言わないのは何故か|世代論に逃げないマネジメント
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「何を考えているか分からない」の正体

「最近の若手は何を考えているのか分からない」「面談では『大丈夫です』と言っていたのに、突然辞めた」——中小企業の経営者や管理職から、最も多く聞く悩みの一つです。そしてこの悩みは、たいてい「Z世代だから」「今どきの子は」という世代論に着地します。

しかし、世代論に着地した瞬間、打ち手はなくなります。世代は変えられないからです。このコラムでは、若手が本音を言わないことを個人や世代の性質ではなく、職場の構造の問題として捉え直し、本音が出る場をどう設計するかを解説します。若手を責めない、そして経営者も責めない——変えるのは「構造」です。

「世代のせい」にすると、何も解決しない

まず確認したいのは、若手が本音を言わないのは、今に始まった現象ではないということです。30年前の新入社員も、上司に本音など言っていませんでした。飲み会で愚痴をこぼし、同期と支え合い、そして黙って辞める人は黙って辞めていた。変わったのは若手の性質そのものというより、転職が当たり前になり、「我慢して居続ける」以外の選択肢が現実的になったという環境のほうです。

つまり、昔は「本音を言わないが辞めもしない」だったものが、今は「本音を言わずに辞める」に変わった。表面化したのは退職という結果であって、「言えなさ」自体は昔から職場に埋まっていた構造です。だからこそ、「最近の若者は」と嘆くのではなく、その構造を見に行く必要があります。世代ごとの傾向を踏まえたマネジメントの考え方はZ世代マネジメントの誤解と実際でも解説していますが、本コラムではあえて世代論の外側から考えます。

若手が本音を言わない3つの構造

構造1|言うメリットがなく、リスクだけがある

若手の立場で考えてみてください。「仕事が合わない気がする」と正直に言って、何か良いことがあるでしょうか。評価が下がるかもしれない、やる気がないと思われるかもしれない、上司の機嫌を損ねるかもしれない。一方で、黙っていれば何のリスクもありません。本音を言う行為が「リスクだけあってリターンのない賭け」になっている職場では、合理的な人ほど黙ります。

構造2|過去に「言って損した」学習がある

入社後のどこかで、意見を言ったら否定された、相談したら「それくらい自分で考えろ」と返された、改善提案が放置された——そんな経験が一度でもあると、人は「この職場では言わないほうが安全だ」と学習します。本音は性格ではなく学習の結果です。ここが変わらない限り、面談の回数を増やしても沈黙が増えるだけです。

構造3|そもそも言語化できていない

見落とされがちですが、若手本人も自分の違和感をうまく言葉にできていないことが多いのです。「なんとなくモヤモヤする」「このままでいいのか不安」という感覚はあっても、それが仕事内容の問題なのか、人間関係なのか、将来への不安なのかが本人にも整理できていない。この状態で「何かあるか?」と聞かれても、「大丈夫です」としか答えようがありません。本音は、引き出す前に、一緒に言語化する必要があるのです。

評価者には本音を言えない、という原理

3つの構造の根っこには、さらに動かしがたい原理があります。人は、自分を評価する相手に弱みを見せない、という原理です。上司は部下の昇給・賞与・配置に影響を持つ評価者です。その相手に「自信がない」「辞めようか迷っている」と打ち明けるのは、査定の場で手の内を晒すようなものです。

これは上司の人柄の問題ではありません。どれほど温厚で信頼される上司でも、評価権を持つ限りこの構造からは逃れられません。1on1を導入しても本音が出ないのは、やり方が下手なのではなく、評価関係の中では出ない種類の本音があるからです。だからこそ、後述するように「評価と切り離された場」を別に用意する発想が必要になります。社内の1on1の質を上げる工夫は1on1で使える質問リストをご覧ください。

本音が出る場の設計——社内でできる4つのこと

構造が分かれば、打ち手が見えます。社内でできる場の設計は4つです。

①「言って得した」体験を作る——若手の発言や提案を、小さくてもいいので実際に採用し、「あなたの意見でこう変わった」と本人に返す。本音のリターンを実演することが、どんな研修より効きます。②聞く場と評価の場を分ける——1on1で出た話を人事評価に使わないと明言し、実際に守る。③「大丈夫?」ではなく行動を聞く——「最近どう?」ではなく「今週一番時間を取られた仕事は?」のように、事実から入ると言語化を助けられます。④沈黙を詰めない——答えに窮したときに畳みかけず、待つ。忙しい経営者ほど、この「待つ」が苦手です。こうした場づくりの土台となる考え方は心理的安全性の実践ガイドで詳しく解説しています。


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自社の若手が本音を言えているかどうか——それ自体、本人に聞いても本音は返ってきません。だからこそ、匿名性のある仕組みで測ることに意味があります。

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外部面談という補助線——評価の外にいる専門家

社内の工夫を尽くしても、「評価者には言えない本音」は残ります。ここに補助線を引くのが、守秘義務のある外部のキャリアコンサルタントによる面談です。キャリアコンサルタントは国家資格で、相談内容の守秘義務が法律で定められています。評価に一切関わらず、話した内容が本人の同意なく会社に伝わることもない——この構造が担保されて初めて、「実は仕事が合っていない気がする」「将来が見えない」という種類の本音が言葉になります。

会社側には、個人の発言ではなく組織としての傾向・課題がフィードバックされるため、経営者は詮索せずに手を打てます。不満が退職届に変わる前に拾う仕組みとして、また退職を申し出た社員への向き合い方としては退職面談で本音を聞く方法も参考になります。

日常のマネジメント——明日からの3つの習慣

最後に、場の設計とあわせて、日常で続けたい習慣を3つに絞ります。第一に、雑談の総量を増やす。本音は面談室ではなく、廊下や昼食の何気ない会話の延長に出ます。用件のない会話を意識的に増やしてください。第二に、自分から先に弱みを見せる。経営者や上司が「あれは自分の判断ミスだった」と先に開示すると、弱みを見せても安全だという証拠になります。第三に、聞いたことに必ず反応を返す。声を上げたのに何も起きない経験は、「言っても無駄」という学習を強化します。採用できない提案でも、採用できない理由を返すこと自体が信頼になります。

どれも費用はかかりません。かかるのは、経営者・管理職側の意識と、少しの時間だけです。

まとめ|沈黙は世代の性質ではなく、職場からのシグナル

整理します。①若手が本音を言わないのは世代の性質ではなく、「言うリスクだけあってリターンがない」「言って損した学習がある」「言語化できていない」という3つの構造の結果。②評価者には言えない本音があるという原理を認め、聞く場と評価を切り離す。③社内では「言って得した体験」を作り、事実から聞き、待つ。④それでも残る本音には、守秘義務のある外部キャリアコンサルタントの面談という補助線を引く

若手の沈黙は、扱いにくさの表れではなく、職場の構造が発しているシグナルです。世代論で片づけず、構造を一つずつ変えていけば、沈黙は少しずつ言葉に変わっていきます。

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