キャリア面談を嫌がる社員にどう向き合うか|「話すことがない」の裏側

キャリア面談を嫌がる社員にどう向き合うか|「話すことがない」の裏側
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「特にないです」で終わった30分をどう受け止めるか

キャリア面談を導入した会社から、こんな声を聞くことがあります。「制度は作りました。時間も確保しました。でも、当たり障りのない話で30分が終わります」。困っているのは、面談を拒否されることより、形だけ成立してしまうことのほうです。

ここで「社員に主体性がない」と結論づけてしまうと、打ち手がなくなります。実際には、話さない側にはきちんと理由があります。そしてその理由の多くは、本人の性格ではなく、面談の設計と職場の状況にあるものです。このコラムでは、社員が身構える構造を分解し、参加率と話の中身を変えるための具体策を扱います。面談そのものの意味づけについてはキャリアコンサルティング面談とは何かをあわせてご覧ください。

「話すことがない」と言われる本当の理由

面談で「特にありません」と返ってくるとき、その裏には少なくとも4つの異なる状態があります。同じ言葉でも中身が違うので、対応も変わります。

ひとつめは、言語化できていない状態。モヤモヤはあるが、それが仕事内容の問題なのか、人間関係なのか、将来への不安なのかが本人にも整理できていない。この状態で「何かありますか」と聞かれても、答えようがありません。

ふたつめは、言っても変わらないと思っている状態。過去に意見を言って流された経験がある。あるいは、先輩が何か言っても何も変わらなかったのを見ている。この場合、黙るのは合理的な判断です。

みっつめは、話した内容が伝わることを警戒している状態。この面談の内容が誰にどう伝わるのかが分からない。評価に響くかもしれない、上司の耳に入るかもしれない。ここが不透明なままだと、無難な話しか出ません。

よっつめは、本当に困っていない状態。これも実際にあります。順調に働いていて、いま特に相談したいことがない。この人に無理やり悩みを引き出す必要はありません。

問題は、この4つが同じ「特にないです」という言葉で出てくることです。だから面談の設計では、少なくとも1つめから3つめまでを、あらかじめ潰しておく必要があります。

社員が身構える3つの構造

構造1:この面談が何のためなのか、説明されていない

「来週、キャリア面談をやります」というアナウンスだけで始まる会社は少なくありません。社員側からすると、突然の呼び出しです。目的が分からない面談は、まず「何かあったのか」という警戒から始まります。人事考課の一環なのか、リストラの前触れなのか、本気で相談していいのか。この不安を抱えたまま席に着けば、無難な受け答えになるのは当然です。

構造2:話した内容の扱いが決まっていない

ここは制度の根幹に関わります。国家資格キャリアコンサルタントには守秘義務があり、個人の面談内容を本人の同意なくそのまま会社へ共有することは原則できません。一方で、本人の同意を得たうえで、個人が特定されない形に整理した全体傾向や組織課題を会社へフィードバックすることは可能です。

この仕組みが社員に説明されていないと、面談は「会社に報告される場」だと受け取られます。逆に、何がどこまで会社に伝わり、何は伝わらないのかが最初に説明されていれば、話せる範囲は明確に広がります。守秘義務の考え方はキャリア面談で社員の本音は守られるのかで詳しく整理しています。

構造3:面談する相手が、評価する人である

直属の上司が面談を担当すると、評価への影響を気にして、本音を話しにくくなる場合があります。これは上司の人柄の問題ではありません。昇給や配置に影響を持つ相手に、迷いや不安を打ち明けるのは、構造的に難しいというだけのことです。

日常のマネジメントとしての1on1と、キャリアを扱う面談は、そもそも役割が違います。両方を同じ人が同じ場でやろうとすると、どちらも中途半端になります。

参加率を上げる設計——案内文・時間・場所

ここからは具体策です。制度を変えなくても、運用だけで変えられる部分から挙げます。

案内文を書き直す。効くのは3点です。①この面談が評価に使われないこと、②話した内容がどう扱われるか、③何を話してもよく、話さなくてもよいこと。とくに③は重要で、「必ず何か話さなければ」という圧を先に外しておくと、かえって話が出てきます。

時期を選ぶ。繁忙期に重ねない。評価面談の直後・直前を避ける。この2つを守るだけで、参加への抵抗はかなり下がります。「いま忙しいのに」と思われた時点で、面談は業務の邪魔でしかなくなります。

場所を変える。社長室や会議室の上座下座がある部屋は避けます。斜向かいに座れる小さなスペース、あるいは社外の会議室。オンラインを選べるようにするのも有効です。とくに本人が自宅など落ち着ける場所から参加できる形は、対面より話しやすいという人が一定数います。

時間を短く区切る。「1時間」と言われると身構えますが、「30分」なら受け入れやすい。足りなければ延長すればよいだけです。


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「話すことがない」人への聞き方

設計を整えたうえで、それでも言葉が出てこない人にどう向き合うか。要点は3つです。

第一に、抽象的な問いから入らない。「最近どうですか」「何か困っていることは」は、答えるのに最も労力がいる質問です。代わりに、事実から入ります。「今週、いちばん時間を使った仕事は何でしたか」「先月と比べて、変わったことはありますか」。事実を話しているうちに、その周辺にある感情が自然と出てきます。

第二に、沈黙を埋めない。答えに詰まったときに畳みかけると、相手は「何か言わなければ」と思い、当たり障りのない答えを選びます。5秒、10秒待つ。この待ち時間に出てくる言葉のほうが、たいてい本物です。忙しい人ほど、この「待つ」が苦手です。

第三に、選択肢を渡す。「仕事の内容、人間関係、これからのこと、働き方——このうちどれが一番気になりますか」。ゼロから言語化してもらうのではなく、方向だけ選んでもらう。選べた時点で、その先は本人が話し始めることが多いものです。

管理職に、先に伝えておくこと

見落とされがちですが、面談の成否を左右する要素のひとつが管理職の理解です。部下が面談に行くのを、上司がどう扱うか。ここで空気が決まります。

伝えておきたいのは3点です。第一に、この面談が評価とは無関係であること。管理職自身が「自分の管理能力を疑われているのでは」と感じると、部下の参加に消極的になります。目的は組織の課題を拾うことであって、上司を評価することではない、と明確にしてください。

第二に、面談の内容を上司に報告する仕組みではないこと。「あいつは何を話したのか」と聞かれても答えられない構造になっている——これを先に共有しておけば、無用な詮索を防げます。

第三に、部下が面談に行く時間を業務として認めること。「暇なら行けば」「その時間で仕事を進めてほしい」という言い方が一度出ると、その部署からの参加は止まります。面談の時間は業務時間であると、会社として明言しておいてください。

管理職を置き去りにしたまま面談だけを導入すると、現場に不信が生まれます。順番としては、社員への案内より先に、管理職への説明です。

外部の面談者だから話せること

社内でどれだけ工夫しても、残る領域があります。「この会社に居続けるべきか迷っている」「今の仕事が自分に合っていない気がする」——こうした話は、評価者にも、同じ会社の同僚にも、しにくいものです。

ここで機能するのが、守秘義務のある外部のキャリアコンサルタントによる面談です。評価に一切関わらず、話した内容が本人の同意なく会社に伝わることもない。この構造があって初めて、言葉になる種類の相談があります。

会社側にとっても、この形にはメリットがあります。個人の発言ではなく、本人の同意の範囲で、個人が特定されない形に整理された組織の傾向が返ってくるため、詮索せずに手を打てます。面談の効果をどう測るかについてはセルフ・キャリアドックは効果をどう測るかで扱っています。

嫌がる社員を、無理に変えなくていい

最後に、いちばん伝えたいことを書きます。面談に前向きでない社員を、全員話す気にさせる必要はありません。

参加率を100%にすることを目標にすると、運用は必ず苦しくなります。「面談を受けたがらない人」を問題視し始めると、それ自体が圧力になり、ますます話されなくなる。目指すべきは全員の参加ではなく、話したい人が話せる場が、確実にそこにあることです。

実務的な線引きとしては、次のように考えるとよいでしょう。面談の機会は全員に等しく用意する。受けるかどうかは本人が選べる。受けない選択をしても不利益はない。この3つを明言したうえで、それでも受ける人が半数いれば、施策としては十分に機能しています。

そして、いま受けなかった人が、来年受けることはよくあります。節目が来たとき、迷いが生まれたときに「そういえばあの面談があった」と思い出してもらえるかどうか。制度は、使われるまで待てることが強みです。1回目の参加率で成否を判断してしまうのは、もったいない話です。

最初の1回は、対象を絞ってもいい

全社員一斉に始めなければならない、という決まりはありません。むしろ初回は対象を絞ったほうが、うまくいく確率は上がります。

絞り方は2つあります。ひとつは節目にいる人。入社3年目、管理職の一歩手前、役職定年を控えた層。キャリアについて考える理由が本人のなかにある時期なので、話が出やすくなります。もうひとつは手を挙げた人。希望者だけで始めて、受けた人が「話してよかった」と周囲に伝えることで、翌年の参加につながります。

全員を対象にすると、一人あたりの時間も、社内調整の手間も一気に増えます。そして初回でつまずくと、「うちには合わなかった」という結論になりがちです。小さく始めて、続けながら広げる。この順番のほうが、結果的に定着します。

それでも参加率が上がらないときに見るところ

設計も整え、声かけも変えたのに参加率が上がらない場合、疑うべきは面談そのものではありません。

ひとつめは、前回の面談で出た声に会社が応えたかです。去年何も変わらなかったのなら、今年参加する理由はありません。応えられる範囲は限られていて構いません。「これは変えた」「これは今は変えられない、理由はこうだ」と、結果を返すことが次の参加率を作ります。

ふたつめは、上司が面談をどう扱っているかです。「あれ、行くの?」という一言があるだけで、参加は激減します。管理職に対して、この施策の目的と、部下の参加を妨げないことを、あらかじめ共有しておいてください。

みっつめは、そもそも職場に余裕があるかです。人が足りず、日々の業務が回っていない職場で「キャリアを考えましょう」と言われても、届きません。その場合は面談の前に、業務の分担を見直すほうが先です。

あわせて、面談を受けた人が何をどう感じたかを、簡単でよいので拾っておくことをおすすめします。面談の直後に、4〜5問の短いアンケートを取るだけで構いません。「話しやすかったか」「時間は適切だったか」「また受けたいか」。これがあると、翌年の設計を勘ではなく事実で直せます。参加率だけを追うと、数字が上がらない年に打ち手がなくなります。受けた人の手ごたえという別の指標を持っておくと、続けるかどうかの判断がしやすくなります。

まとめ|面談は「話させる場」ではなく「話せる場」

整理します。①「話すことがない」には、言語化できていない・言っても変わらないと思っている・扱いを警戒している・本当に困っていない、の4つが混ざっている。②社員が身構える構造は、目的が説明されていない・話の扱いが決まっていない・面談者が評価者である、の3つ。③運用で変えられるのは、案内文・時期・場所・時間の4点。④聞き方は、事実から入る・沈黙を埋めない・選択肢を渡す。⑤参加率100%を目標にしない。機会を等しく用意し、選べるようにする。

面談がうまくいっている会社は、社員がもともと話し好きなのではありません。話しても大丈夫だという材料が、事前にそろっているだけです。目的、扱い、断る自由。この3つを面談の前に渡せているかどうかで、当日の30分はまったく違うものになります。次の案内文を書くときに、まずそこから見直してみてください。

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